デザイン橡

デザイン橡

20234月、ATARIYA オンラインショップに加わったPARANOMAD(パラノマド)『さざなみヘアターバン』。
誕生の背景には、豊かなものづくりのネットワークがあります。ATARIYAが提案する、ものをたどる旅/ TRACE THE TANGO*Vol.2「さざなみヘアターバン」オンライン版へ、ようこそ!

 

今日の旅ではさざなみヘアターバンの特徴である、藍染の物語をたどります。

 

「どこかで見た生葉(なまは)染めの藍染がすごくいい水色をしていて。畑をやっているから、自分で育てたら染められると思ったんだ」。デザイン橡 代表 豊島美喜也さんを魅了したのは、うすい水色をした藍染。一般的に藍染といえば紺色のしっかりした色合いを思い浮かべるでしょうか。

PARANOMAD代表は、デザイン橡の藍染ブランケットを初めて見た時のことを今でも覚えています。テーブルの上に置かれたブランケットには流れる水のような色彩が浮かんでいました。コットンの柔らかい質感と相まって、なんて気持ちよさそうな生地だろうと飛びついたのです。

 

さまざまな色合いの経糸 デザイン橡にて

 

デザイン橡のものづくりは、建築設計に始まり、美喜也さん自身が作り手となる大工、家具職人、そして機屋(はたや)と多岐に渡ります。手機や紡績機の自作と修繕ができるため、機大工としても各地を飛び回る日々。綿花を栽培し、日本古来の紡績方で糸を作り、手織りの生地を織り上げる。一方で力織機を用いた金属線の織物も開発し…その活躍の幅広さから、丹後のミケランジェロとも呼ばれています。

 

デザイン橡  豊島美喜也さん

 

ブランケットに身惚れたPARANOMADに「藍染は楽しいよ。やってみたらいいんじゃない?」と美喜也さんは声をかけてくれました。そんなに簡単にできるものなんだろうかと驚きつつ、体験させてもらうことに。布を藍甕に漬け、水ですすぐ。基本の作業はとてもシンプルです。藍甕から引き上げた布が濃いカーキからブルーに発色していくさまは、とても不思議で美しいものでした。

 

PARANOMADの生地に藍染を施して

 

デザイン橡には畑から育てた藍と、北海道と徳島から取り寄せたスクモの計3種類の甕を設置しています。副材料で使う木灰は冬の間のストーブからストックしてあり、水は井戸水を使うため廃水を気にする必要もありません。ものづくりや伝統と聞くと、職人にしか許されない特別なものと身構えてしまいそうですが、藍染めも綿花の栽培も少し前まで普通の家で行われていました。機織りも特別な技術ではなかったのです。現代は、生活の中で物を作ることがあまりに少なくなったのではないでしょうか。もちろん精緻なものづくりは昔から職人が技を磨き、深く均一な藍染めは紺屋(藍染や染めの専門家)でなければ難しいですが、ものづくりはもっと身近な存在でした。

 

 

デザイン橡は「そんなことないよ」とものづくりの世界に梯子をかけてくれる存在です。PARANOMADだけではなく、工房を訪ねてくる人みなに綿花や手織りの楽しさをシェアしてくれます。
美喜也さんは福岡県出身。街から離れた田舎で子供時代を過ごしたそうです。「いま工房がある地域よりもっと田舎で、隣の家までとても遠かった。お店も何もないところで、山に入って何かを採ったりして遊んでいたんだ」。
作ることは遊びでもあり、暮らしの一部でもありました。人々が手放してしまったものを作る行為を、当たり前のこととして身体に蓄えてきたのです。繊維産業を特殊なものと身構えず、手と頭に染み付いた「つくる」ことへ変換してきました。

 

乾燥させた藍の葉

 

さざなみヘアターバンの生地は、当初は衣服用に企画したものでした。淡い水色を格子状に染め上げ、モダンなパターンの羽織に仕立てています。このかわいい藍染をもっとカジュアルなアイテムにも使いたいと考え、ヘアターバンが生まれました。

 

ヘアターバンと同じ生地で作られた羽織  (撮影 Yusuke Kinaka)

 

ものをたどる旅/ TRACE THE TANGO*Vol.2「さざなみヘアターバン」オンライン版、2回にわたりご案内しました。
それぞれの工房が歩んできた道が交差する瞬間に、とても自然なかたちで生まれたコラボレーションアイテムです。丹後は織物や機械金属の工場を始め、工芸作家やアーティストも多く創作活動が盛んなエリアです。小さな半島の小さなつながりが、大きなものづくりネットワークへと成長しつつあります。

 

ものをたどる旅 / TRACE THE TANGOへ、実際に訪れてみてはいかがでしょう。ものづくりとあなたを、つなぐ旅にようこそ。

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