UAスツールの座面に使われている素材 ” 丹後ちりめん ” 。
京都の丹後地域を中心に生産されている、表面にシボと呼ばれる細かい凹凸があることが特徴の織物です。
元々は絹糸を使うことが一般的でしたが、ポリエステルなどの化学繊維を使ったものも普及しています。
ARIAの有吉さんは、ATARIYAのプロジェクトに関わる過程で、この地元産のテキスタイルをインテリアに使いたいと考えていました。
そこで相談したのは、以前から懇意にしている、宮眞株式会社の宮崎輝彦代表。
ATARIYAからは歩いても数分の距離にあります。
そこで目にしたのは、堆く積み重ねられている多種多様の反物たち。
長い期間に渡って多種多様な織物を企画・提案する過程で、日の目を見ることのなかった生地です。
わざわざ新しいものを作らなくても、これらの生地を有効活用することが今の時代にふさわしいのでは?ということで、スツールの座面を始め、カーテンなど、ATARIYAのインテリアに活用されることになりました。
これらの生地たちは、古いものでは40年ほど前のものもあるということで、中には今では再現することのできない技術が込められた貴重なものもあるのだとか。
景気のよい時代には、生地がどんどん出荷されていく一方で、長い年月で残ってきた生地が少しずつ溜まっていって、今の状態になっているそうです。
一時期は、個人で洋服の企画・販売をしていたような人たちが、生地を買い求めて来訪することも少なからずあって、量り売りにも対応していたそうです。その名残りか、巻きの多い・少ないにバラツキが見られます。しかし今ではそういう業態の人もいなくなり、ほとんど動かなくなっていたところに、今回のARIAのオファー。インテリアという新しい業界への広まりにつながれば、という期待は少なからずあるとのこと。
宮眞は明治時代から織物を家業として、和装の半衿や帯揚げを製造していました。
1970年台後半には、ポリエステルちりめんの製造や織機の広幅化などの新技術に挑戦し、和装だけでなく洋装向けの生地も開発してきました。
素材も絹にとどまらず、合成繊維、さらに複合素材など、常に新しい素材を探し求め、オリジナリティーがあって、他にない生地を特徴としています。
現代表の宮崎輝彦さんは、大学卒業後に家業へ入って、社内の職人たちから知識と技術を受け継ぎました。宮眞が得意とする製品の特徴に「絹と異素材の交織」があります。
絹は、連続した長さのある繊維からなり、フィラメント糸と呼ばれます。一方で、綿、ウール、麻などは、繊維が短いために、それらを束ねながら糸に紡ぐ工程が必要で、紡績糸やスパン糸と言われます。このフィラメント糸と紡績糸では繊維の特徴が違うため、準備工程から仕上げまでの扱い方や注意点が異なり、一つの生地に織り上げるには多くのノウハウが必要です。
先代たちが積み重ねてきた技術を軸にして、糸の本数や密度計算、経糸と緯糸の交差や仕上げ加工など、糸が織物になるまでを自社で設計されています。
その背景があって、バブル崩壊の余波が産地へも及んだ10数年前に、海外向け製品の開発に着手して、日本以外にも販路を獲得することにつながります。
パンデミック下、そういった海外からのオーダーは一旦は完全に止まってしまいました。しかし、そこから立ち直るのは比較的早く、今年に入ってからは海外の主要なテキスタイルの展示会も再開され、数多くのバイヤーたちでにぎわったとのこと。
一方で、国内のアパレルはなかなか苦境から立ち直れない状況が続いています。
宮眞としては、さまざまな規模の事業者であったり、国内外の取引先であったりと、多方面に渡ってお付き合いをしてきたことで、今の状況を乗り切ってこれているそうです。
今回のインテリア分野へのチャレンジは、宮眞の新しい分野への広がりとなるのでしょうか?
まずは既存の生地の有効活用から、ということなので、興味のある方はぜひ宮眞へご一報を。