TANGO CELLAR|臼井織物・たてつなぎ

TANGO CELLAR|臼井織物・たてつなぎ

福田工務店のランバーヤードで開催された「丹後 そざいとくらし展」。

その一角に、丹後に縁のあるひとたちなら、思わずくすりとしてしまうようなアイテムが並べられていました。

 

 

これらのアイテムは、「たてつなぎ」という、丹後の織物屋の後継者たちが結成したユニットが開発したもの。メンバーの3人は、いずれも丹後を離れて別の仕事をしていたのですが、しばらくして戻ってきて家業に従事しているという共通点があります。

そのうちのひとりが、臼井織物の臼井勇人さん。

この時は、ちょっと変わったエプロンを着て来場者と話をされていました。

 

 

光の当たり具合で色が変わって見える、不思議な素材。

これは”たまむし染め”という昔からある友禅の技法を、ちりめん生地に施したもの。

そのちりめん生地は、通常のものより糸をかなり強く撚った、勇人さん考案のものです。また普通は横糸のみに使われる強撚糸を縦糸にも使うことで、凹凸がより強くしっかりと出ています。

 

 

その凹凸が光を乱反射させて、色の変化を生み出しているわけです。

 

臼井さんは、このようなちょっと変わったちりめん生地を開発することに日々挑戦しています。

それもあまり使い道は考えないで、これまで丹後の他のどの機屋も取り組んでいないようなものを如何に生み出すか?が重要なポイントです。

 

臼井織物株式会社は、1952年に与謝野町で創業されました。

高級絹織物の産地である丹後では、数少ない合成繊維の織物に特化した織元です。

 

 

また、通常は数社にまたがって分業になっている工程を内製化していて、糸を撚る”撚糸”から、織物に仕上げる”製織”まで自社で一貫しています。

そうすることで、安定した品質で、柔軟な対応力で、高い再現性で、オリジナリティの高い織物を製造することができます。

 

その本業に従事する傍ら、勇人さんはユニークな織物作りに取り組んでいます。特に、硬いちりめん生地を織ることにこだわりがあって、開発のひとつのテーマになっているそうです。

本来の絹のちりめんは、しなやかさや柔らかさが特徴。

その逆を張って、ちりめんの技術を使いながらどれだけ硬いちりめん生地が作れるか?が、ひとつのこだわりです。

家業を離れていたことで、織物の世界の常識に染まっていないところから生まれた発想と言えます。

 

その結果できあがった生地はユニークで、これまでの和装や洋装の世界以外の目に留まり、おもしろいと思ってくれたところと一緒に更に新しい生地に進化させて製品となっていく事例につながっていきます。

それは服だけでなく、バッグやインテリアといった新しい領域にも広がっています。

そうやって、ちりめんにまた新しい価値と可能性が生まれていきます。

 

また最近では、単に「丹後ちりめん」を使った製品ということではなく、「臼井織物の生地」を使った製品という発信がされるようにもなってきました。

 

 

たてつなぎというユニットによる取り組みについても、根本は同じ。

ちりめんを使った新しいジャンルの製品作りがテーマになっています。

元々は丹後ちりめんを地元・丹後の人たちに使ってもらいたい、という思いからスタートしています。

これまであったのは、着物以外にはふろしきや袱紗といったものがあるくらいでしたが、いずれもいまの生活の中では出番が少なくなってきています。

 

そこでいろいろと考えを巡らせて生まれたのが、まずはオーダーメイドギフトのテキスタイルパネル。

特殊な染め方のインクジェットプリント加工をちりめんに施すことで、発色がよくて色落ちしにくい、これまでにないプリント生地が出来上がります。それを木枠に張り込んだもの。

 

 

インクジェットはデータがあれば1枚からでも印刷できるので、オーダーメイドギフトとして、お子さまの描いた絵や写真などをパネルにすることができます。同じ生地で、ポーチも作成しています。

それら製品への加工の工程も、全て丹後内で完結しているので、小ロットで迅速な対応ができるそうです。

 

その流れで生まれたのが、最初に挙げたローカルコラボのグッズたち。

地元・丹後で愛されるブランドのロゴをちりめん生地にインクジェットプリントしたもので、まず作られたのは、地元の給食でお馴染みのヒラヤミルクのポーチでした。

ヒラヤミルクに許可をいただいて、実験的にたてつなぎのInstagramで販売してみたところ、あっという間に完売。まだフォロワーの数もそれほどでもなく、しかもそれほど安い価格でもなかったにも関わらず、です。その後も追加生産をする度に、即完売という状況が続くために、一時期は予約販売となります。

調べてみると、その大半が丹後域内からの注文だったそうで、考えていたことと求められていたことが一致していたということがうかがえます。

いまはアイテム展開も増え、ある程度の数の生産もできるようになったので、発売当初のようなに欠品が続くようなことはありませんが、それでもコンスタントに売れ続けているそうです。ふるさと納税の返礼品にも取り上げられています。

このローカルコラボは、やりすぎない範囲で次の展開が進められています。

 

 

勇人さんは、このようにちょっと変わった生地を、ちょっと変わったアイテムに展開していくことで、これまでにちりめんに触れたことがないような人たちにも興味を持ってもらえるような仕掛けを続けていきたいそうです。

 

300年にも渡る丹後ちりめんの産地が培ってきた技術があるからこそ、可能性がどんどんと広がっていく。

これからの展開を感じることができました。

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